その夜、僕は思わず手を止めた。
深夜0時過ぎ、眠気まなこでスマホを見た瞬間、胸の奥が“ドクン”と鳴った。
画面には「商品が購入されました」の文字。
それは、僕が副業として出した初めてのDIY作品――小さな木製の本棚が売れた瞬間だった。値段は3,800円。材料費は1,200円。
つまり、利益はわずか2,600円。
でも、その2,600円は、まるで“自分の価値を証明してくれたメダル”のように輝いて見えた。なぜなら僕は、その瞬間、初めて「自分の手で作ったものが、誰かの暮らしに届いた」という実感を得たからだ。
それは数字以上の喜びで、僕にとって“お金が感謝に変わる”瞬間でもあった。とはいえ、そこにたどり着くまでの道のりは、まるで凸凹だらけの木材みたいにガタガタだった。
- 寸法をミスして、カットした板を3枚も無駄にした
- ニスの色を間違えて、作品が安っぽく見えた
- 送料を計算し忘れて、売れるたびに赤字になった
今なら笑えるけれど、当時は「やっぱりDIYで稼ぐなんて無理かもしれない」と何度も心が折れかけた。
でも、木くずまみれの作業台の上に残る作品を見ていると、どこかで声が聞こえるようだった。
――「好きなことで、お金の流れを変えてみよう」って。
その言葉を信じて続けた3か月後、僕はようやく“月3万円”という副収入を手にした。
小さな数字かもしれない。けれどそのお金は、「自分にもできる」と思える力を与えてくれた。
この記事では、僕が木工DIY副業を通して経験したことを、
成功談だけでなく、“失敗と気づき”のリアルな物語としてすべてお伝えする。
「趣味を副業にできたらいいな」と思っているあなたへ、少しでもその背中を押せたら嬉しい。
なぜ木工DIYが“副業候補”になり得るのか?
「DIYなんて、趣味の延長でしょ? 本当に副業になるの?」
僕も最初はそう思っていた。
でも、実際に販売を始めてみると気づいたんだ。
“一点もの”を求めている人が、想像以上に多いということに。
僕の小さな本棚を買ってくれたお客様は、取引メッセージでこう言ってくれた。
「ホームセンターでも似たような棚はあるけど、手作りの温もりを感じたのは初めてでした」と。
その言葉が、僕の中の価値観をひっくり返した。
――「手作り=自己満足」じゃない。ちゃんと“誰かの暮らしを支える”ことができる。
実際、minneなどの調査によれば、
ハンドメイド販売を副業として行う人のうち、約30%が月1万円以上の収入を得ている。
さらに、約5%は月10万円以上を稼ぎ出しているというデータもある。
(参考:Lulucad.jp)
この数字を見たとき、僕は「もう趣味とは呼べない」と感じた。
木工DIYは、“感性と実用”が両立する数少ない副業ジャンルなんだ。
- 家具や収納など、生活に役立つ“実用性”がある
- 単価が高く(3,000〜10,000円台)利益が出しやすい
- SNSや写真映えでファンがつきやすい
しかも近年は、「サステナブル」「リメイク」「古材再利用」といった価値観が注目され、
“手作りの木の温もり”が時代の追い風を受けている。
量産ではなく、心を込めて作ることが“付加価値”として評価される時代になったんだ。
もう、ただモノを作る時代じゃない。
これからは“想いを形にして届ける時代”。あなたの手の中にある木材が、誰かの生活を変える可能性を秘めている。
それが、木工DIYが副業として選ばれる理由なんだ。
僕が月3万円を稼ぐまでにやったステップ
「どうやって実際に稼げるようになったんですか?」
これは、講座や相談で最もよく聞かれる質問だ。
だから今回は、僕がゼロから始めて“月3万円”を安定して稼げるようになるまでのプロセスを、リアルに、そして正直に紹介したい。
最初に断っておくと、特別なスキルや高級工具は必要なかった。
必要だったのは、「続ける力」と「小さな改善を重ねる習慣」だけ。
木工DIYの副業は、まるで木を削るように、少しずつ形を整えていく作業なのだ。
ステップ①:自分が「作っていて楽しいモノ」を決める
副業のスタートラインで最も大事なのは、“売れるもの”より“続けられるもの”を選ぶこと。
なぜなら、好きでもない作品を作り続けると、必ず心が折れるからだ。
僕の場合、「木の香りが残る小家具」が好きだった。
だから最初は、棚・スパイスラック・スマホスタンドなど、暮らしの中に“少し幸せが増える”ような小物を中心に作った。
「自分が飾りたい」と思えるものを作ると、自然と仕上がりにも魂がこもる。
ステップ②:原価と時間を記録する
次に直面したのは、「あれ? 思ったより儲からないぞ」という壁だった。
DIY副業では、利益構造の見える化が命だ。材料費だけでなく、工具・ニス・送料・手数料――そのすべてが、じわじわと利益を削っていく。
僕はExcelに「1作品のコストシート」を作り、
原価・作業時間・販売価格をすべて記録した。
そして、目標利益を1作品あたり2,000円以上に設定。
こうすることで、ようやく「作ること」と「稼ぐこと」のバランスが取れた。
木を削るように数字を削る。
“感覚”から“管理”に切り替えた瞬間、利益が生まれ始めた。
ステップ③:販売プラットフォームを決める
どんなに良い作品でも、「人の目に触れなければ存在しない」のと同じだ。
僕はまず、minneとメルカリShopsの両方を使って販路を広げた。
- minneは、作品の世界観を伝えやすくファンがつきやすい。
- メルカリShopsは、流通スピードが速く回転率が高い。
どちらも得意分野が違う。だから僕は、minneでは「ブランドとしての信頼」を、メルカリでは「スピードと実績」を育てた。
そして販売ページには、SEOを意識して「作品名+用途+素材」をタイトルに盛り込んだ。
――まるで“作品に名前を授ける”ような感覚だった。
ステップ④:写真と説明文を磨く
販売ページを整える中で痛感したのは、「写真が9割」という現実。
どんなに丁寧に作っても、写真が悪ければ見向きもされない。
そこで僕は、自然光が差し込む時間帯に撮影し、背景は白い壁や木目で統一した。
スマホでも十分撮れるけれど、光と構図の工夫で印象は劇的に変わる。
説明文にも「温もり」「香り」「一点もの」など、感情が伝わる言葉を入れるとクリック率が上がった。
作品を“見せる”のではなく、“感じてもらう”。
それが売れる木工の第一歩だ。
ステップ⑤:小さな改善を積み重ねる
そして最後に行き着いたのが、「改善は最強の武器」という結論。
売れた作品ほどレビューを読み込み、使ってくれた人の声を記録した。
「もう少し大きめがいい」「色をナチュラルに」――そうした意見をもとに、
試作を繰り返してブラッシュアップしていくと、自然とリピーターが増えていった。
DIY副業は、努力が直接“カタチ”になる世界だ。
作品を磨くたびに、自分も磨かれていく。
そして、手の中の木が少しずつ“収入”という現実に変わっていく――その瞬間が、何よりも楽しい。
初心者が陥りやすい“3つの落とし穴”
正直に言おう。
僕も最初の数か月は、“売れない理由”のデパートみたいな状態だった。
頭では分かっていても、やってみると落ちる――それがこの3つの落とし穴だ。
❌ 落とし穴①:材料費を軽く見すぎる
最初の僕がまさにこれだった。
「とりあえず作ってみよう」で始めた結果、完成しても利益どころか赤字。
木材はホームセンターで安く見えても、塗料やネジ、梱包材、送料、手数料……気づけば出費は“見えないシロアリ”のように利益を食っていた。
DIY副業では、数字が木材よりも正直な材料だ。
作品を作るたびに「利益=販売価格 −(材料費+送料+手数料)」をメモする習慣をつけよう。
利益を守ることは、モチベーションを守ること。
数字を味方につけた瞬間、ようやく“続けられる副業”になる。
❌ 落とし穴②:作品に“買う理由”がない
ある時、僕は気づいた。
「なぜこの作品を買うのか?」という問いに、自分が答えられていなかったことに。
売れる作品には、必ず“誰かの不便を解決するストーリー”がある。
たとえば、「狭いキッチンにぴったりのスパイスラック」や「在宅ワークにちょうどいいPCスタンド」。
使う人の生活を想像すると、デザインも自然と“機能する形”に変わっていく。
僕の作品が売れ始めたのも、「おしゃれ」より「役に立つ」を意識した瞬間からだった。
つまり、DIY副業は「作る力」よりも「相手の生活を思い描く力」が鍵なんだ。
“作品を売る”のではなく、“解決策を届ける”。
その意識の差が、売上の差を生む。
❌ 落とし穴③:宣伝を恥ずかしがる
最後の落とし穴は、意外と多くの人がハマる。
僕もその一人だった。SNSに作品を載せるたび、心のどこかで「自慢してるみたいでイヤだな」と感じていた。
でもある時、SNSで製作途中の写真を投稿したら、コメント欄に「その色味、すごく素敵」「完成が楽しみ!」という言葉が並んだ。
それを見た瞬間、僕は気づいたんだ。
宣伝は“売るため”ではなく、“つながるため”の行動なんだって。
いまは、Twitter(現X)やInstagramで製作過程を日記のように発信している。
そのリアルな過程に共感してくれた人が、“作品のファン”ではなく、“僕の物語のファン”になってくれる。
それが一番強いブランディングだ。
作品を磨くのも大事。
でも、本当に売れるのは“あなたのストーリー”だ。
利益を出すコツ ― 原価・価格設定・販路の戦略
副業として木工DIYを続けていくと、必ずぶつかる壁がある。
それが、「作品は売れているのに、お金が残らない」という現実だ。
この章では、僕が試行錯誤の末に見つけた「数字で負けないための仕組み」をお伝えする。
1. 原価の見える化 ― 数字は、もうひとつの木目だ
木工DIYは感性の世界に見えるけれど、実は「数字を見る力」こそが生き残りの鍵だ。
材料の値段、手間、送料――そのひとつひとつに、木の年輪のような「積み重ねのストーリー」がある。
僕は毎作品ごとに「コスト表」を作っている。
数字を可視化すると、感覚では気づけないムダが見えてくる。
項目 | 単価 | 備考 |
---|---|---|
木材(SPF材) | 600円 | ホームセンター購入 |
ニス・塗料 | 120円 | 1缶あたり10回分換算 |
金具・ビス | 80円 | まとめ買い計算 |
梱包材 | 150円 | ダンボール・緩衝材込み |
発送料 | 850円 | 宅急便60サイズ |
販売手数料 | 380円 | 販売価格の10% |
合計は2,180円。
販売価格3,800円なら、利益は1,620円。
ここで初めて、「時給換算でいくらの価値を生み出しているか」が見える。
僕にとって、この“数字を整える作業”は木工の研磨と同じだ。
荒削りのままでは美しく仕上がらない。
利益も、心も、丁寧に磨いてこそ光を放つ。
2. 適正価格の考え方 ― 値段は「自信」の物差し
初心者の頃、僕は「安くすれば売れる」と信じていた。
でも、安さは刃物のようなもので、気づかぬうちに自分の価値まで削ってしまう。
ある日、僕の作品を購入したお客様が言った。
「この価格でいいんですか? もっと高くても買いますよ」。
その一言で、僕は「価格は自信の証」だと気づいた。
以来、僕の基準はこうだ。
「材料費 × 3 + 手数料 + 送料」
これを下回る価格にはしない。
そして、価格の理由をしっかり説明する。
たとえば、「天然木を使用し、一点ずつ手仕上げ」と伝えるだけで納得感が生まれる。
手作りには、“理由のある値段”が必要だ。
数字に心を宿らせる――それが、DIY副業で信頼を築く最初の一歩だ。
3. 販路の選び方 ― あなたの作品が“生きる場所”を探そう
作品を作るのが好きな人ほど、販売を後回しにしがちだ。
でも、どんなに良い作品でも「見つけてもらえなければ、存在しない」のと同じ。
販路は、あなたの作品の“ステージ”だ。適した舞台を選ぶだけで、売れ方は変わる。
販路 | 特徴 | 向いている人 |
---|---|---|
minne・Creema | 作品の世界観を伝えやすく、固定ファンが育ちやすい | コツコツ続けたい人 |
メルカリShops | 回転率が高く、初心者でもすぐ始められる | まず経験を積みたい人 |
BASE | 自分ブランドを構築でき、SNS発信と相性が良い | 自分の世界観を発信したい人 |
イベント販売 | 直接対面でき、単価を上げやすい | 人と話すのが好きな人 |
僕は最初、メルカリで“市場の感覚”をつかみ、minneで“ブランド性”を育てた。
販路を分けることで、スピードと信頼を両立できるようになった。
DIY副業の本質は、モノを作ることではなく、「価値の流れ」を作ること。
どこで、誰に、どう届けるか――それが利益を生む本当の戦略だ。
僕からあなたへ ― DIY副業を始めたい人へ伝えたいこと
夜中、作業台の上に散らばる木くずを見つめながら、ふと考えることがある。
「なんで、こんなに手間のかかることを続けているんだろう?」と。
だけど、そんなときこそ思い出すんだ。
あの“初めての本棚が売れた夜”を。
スマホの通知が光った瞬間の胸の高鳴り。
「自分の手で作ったものが、誰かの暮らしに届いた」あの小さな奇跡を。
DIY副業をやっていると、必ず壁にぶつかる。
作品が売れなかったり、材料費がかさんだり、時間が足りなかったり。
でもね、“失敗も作品の一部”だと思えるかどうかで、続けられる人と諦める人が分かれる。
完璧を求める必要はない。
木の表面に小さな節(ふし)があるように、あなたの作品にも“味”がある。
その不完全さが、誰かの心に刺さることだってあるんだ。
そしてもう一つ、大事なこと。
副業を続ける上で一番のスキルは、「継続する力」だと僕は思う。
1日10分でもいい。手を動かす。磨く。考える。
そうやって積み上げた時間は、ちゃんと形になってあなたに返ってくる。
手を動かすたびに、未来は変わる。
これは、僕が10年以上副業を続けてきて辿り着いた、たったひとつの真実だ。お金を稼ぐためだけじゃない。
あなたが「自分の手で人生をデザインしていく」ために、今日も一枚の木を削っていこう。
よくある質問(FAQ)
Q1. DIY副業を始めるのに必要な初期費用は?
僕の経験上、1万円前後あれば十分にスタートできます。
すでに工具を持っていれば、材料と塗料代だけでOK。
最低限そろえておきたいのは、電動ドライバー・ノコギリ・サンダーの3点です。
最初から完璧な環境を作ろうとしなくて大丈夫。
“今ある道具でできること”を工夫する力こそ、DIYの本質です。
Q2. 副業として確定申告は必要?
はい。年間の副業収入が20万円を超えた場合は、確定申告が必要です。
ハンドメイド販売の場合は「雑所得」または「事業所得」として扱われます。
例えば、売上から材料費などの経費を差し引いた“利益”が対象です。
早めに帳簿をつけておくと後が楽になります。
(参考:news.pb-a.jp)
僕自身も最初の年はギリギリまで領収書を探して焦りました(笑)。
“申告は自分を守るための仕組み”だと考えると、気がラクになりますよ。
Q3. 売れる作品の特徴は?
「使うシーンが想像できる作品」が圧倒的に強いです。
たとえば「狭いキッチンでも置けるスパイスラック」や
「在宅ワーク中に癒やしをくれる木製スマホスタンド」など。
見た目のデザインよりも、“誰の、どんな悩みを解決するか”を意識すると、自然と売れる方向に近づきます。
僕も“自分が使いたいもの”から“誰かが欲しがるもの”へ意識を変えた瞬間、売上が一気に伸びました。
Q4. 材料を安く仕入れるコツは?
僕がよく使うのは、ホームセンターの端材コーナー。
木目や形に個性があり、むしろ“味のある素材”が見つかることも多いです。
また、地元の製材所やネット通販(モノタロウ・カインズオンライン)もおすすめ。
大量に買うより、まずは“少量で多く試す”のがコツ。
作品の方向性が定まってから、まとめ買いでコストを下げましょう。
Q5. 続けるモチベーションをどう保つ?
正直、売れない時期は誰にでもあります。僕にもありました。
そんなときこそ、SNSで作品や製作過程を発信してみてください。
「すてき!」「私も欲しい!」という声が、何よりの原動力になります。
僕は今でも、コメントやDMで届く“使ってくれている写真”を見ると、
「やっててよかった」と心の底から思います。
それが次の作品を生むエネルギーになるんです。
あなたの作品が誰かの生活を変える。
その実感こそ、モチベーションの最強の燃料です。
あなたの“手”が、これからの副業を作る
僕はこれまで、いくつもの作品を作ってきたけれど、
どの作品にも共通していることがひとつある。
それは、「手を動かすほど、心も変わっていく」ということだ。
木を切り、削り、磨き、形にしていく過程は、
まるで自分自身を少しずつ整えていくようだった。
そして気づけば、DIY副業は“お金を稼ぐ作業”ではなく、“自信を育てる時間”になっていた。
誰かの「ありがとう」をもらうたびに、
僕の中で“稼ぐ”という言葉の意味が変わっていった。
今では、「稼ぐ=ありがとうを増やすこと」だと本気で思っている。
あなたの手にも、同じ力がある。
道具を握るたび、少しずつ世界が変わっていく。
作品を作ることは、あなた自身の可能性を彫り出していくことなんだ。
“好き”を信じて、一つの作品から始めよう。
今日の小さな一手が、明日のあなたをきっと変えていく。
副業は、努力の延長ではなく、人生の再設計だ。
あなたの“手”が、その未来を描くペンになる。